中性化、コンクリートの中性化
コンクリートが空気中の炭酸ガス、水中に存在する炭酸、その他の酸性のガスあるいは塩類の作用によりアルカリ性を失っていく現象(鉄筋コンクリート造建築物の耐久性向上技術)
モルタルやコンクリートが空気中の炭酸ガスなどの作用によってアルカリ性を失って中性に近づくこと。中性化すると鉄筋類の防錆効果を失う(建築大辞典)
補足
1.中性化深さ試験
採取したコンクリートの断面にPH指示薬(1%フェノールフタレイン溶液)により、着色しない部分の深さを測定(およそPH8.0~10.0でピンクないしは赤紫色を示す)。
採取方法は、
- コア法
- 小径コア法
- はつり法
- ドリル法
などがある。
中性化試験状況(コア法)
2.中性化の予測との比較
コンクリートの中性化に関する評価は、①コンクリート中の鉄筋位置まで中性化が進んでいるか、②経年数から推定される中性化予測値よりも進んでいるか の2点から評価することが多い。また、中性化が進行しているとしても躯体内の鉄筋が腐食しているかどうかを評価することが既存建物の劣化を判断するうえでは重要となる。
「なお、中性化が鉄筋位置まで到達している場合でも鉄筋の発錆が認められない場合は雨水等の浸透を防止する対策を施すことで当該部材の減点数は0としてもよい。」(耐震診断基準同解説)
中性化深さの推定式は、中性化が定常状態での炭酸ガスのコンクリートへの拡散によって生じると仮定した場合に、中性化深さCは、経過時間tの平方根に比例する、いわゆる「ルートt則」が用いられ、多くの推定式が提案されている。
C=A√(t)
C︓中性化深さ(mm)、t︓経過年数、A:中性化速度係数(多くの要因によって定まる係数)
※調査診断の評価では、下記の岸谷式に水セメント比60%、中性化比率(骨材、化学混和剤、セメントの種類等)を「1」と仮定した予測式で算出している。仕上げ材の中性化抑止効果を考慮する場合もある。
t=7.2C2
参考:岸谷式
(水セメント比60%以上の場合)
t={0.3(1.15+3X)}/{R2(X-0.25)2}C2
(水セメント比60%以下の場合)
t=7.2/{R2(4.6X-1.76)2}C2
C︓中性化深さ(mm)、t︓経過年数、X:水セメント比、R中性化比率
3.中性化の傾向
- コンクリートのひび割れ部周辺は局所的に中性化が進行する
- 雨掛り面(外部)よりも非雨掛り面(内部等)の中性化進行が速い
参考文献
- 鉄筋コンクリート造建築物の耐久性向上技術(建設大臣官房技術調査室、 国土開発技術研究センター)
- 建築大辞典(彰国社、1993)
- 建築工事標準仕様書・同解説JASS5鉄筋コンクリート工事(日本建築学会)
- 鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準同解説(日本建築防災協会)