改正区分所有法 ― 管理組合が押えるべきポイント

2026.04.30 /

1. はじめに

2025年5月30日に「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」(令和7年法律第47号)が公布され、そのうち区分所有法に関わる部分が2026年4月1日に施行されました。本改正法は区分所有法のほか、マンション管理適正化法、マンション再生円滑化法(旧マンション建替え等円滑化法)、被災区分所有法を一括改正するもので、約23年ぶりとなる区分所有法の大幅改正(以下、「改正区分所有法」)を含んでいます。特に管理組合の総会運営に影響が大きい事項として、規約の改正などに係る集会(総会)の成立要件(定足数)および決議要件の変更が含まれます。

改正区分所有法附則第2条第3項により、施行日において新法に抵触する旧規約の規定は効力を失うと定められています。このため、規約改正が済んでいない管理組合では、定足数や決議要件について2026年4月1日以降は現行規約の規定と抵触することとなります。

「規約改正の準備を進めている管理組合」「今回は改正を見送る管理組合」のいずれであっても、2026年4月1日以降に招集される総会議案の決議においては、改正区分所有法の規定に従う必要があります。

本記事では、区分所有法の改正部分のうち、2026年4月1日までに管理規約を改正していない管理組合が、今後の総会で押さえておくべきポイントを整理します。

2. 総会開催にあたり押さえておくべきポイント

規約改正が間に合っていない管理組合は、次回以降の総会の招集通知を改正区分所有法に適合した内容に整えてください。これは規約改正議案を入れている組合にも、議案化していない組合にも共通して必要な対応です。

以下、改正前の標準管理規約を例として、押さえておくべきポイントを順に整理します。

(1) 招集通知の発送時期

  • 通常の総会:現行規約に従い、会日の2週間前まで(注1)
  • 緊急時の短縮:現行規約に短縮規定があっても適用不可。1週間前を切る短縮はできない(注2)

(注1)改正区分所有法第35条第1項は「1週間前まで」と定めるが、規約で伸長することは可能。多くの管理組合は標準管理規約に倣い2週間前までと定めているため、現行規約のままで法の要件を満たす。

(注2)改正法では規約による招集期間の短縮ができなくなった(旧法「伸縮可」→改正法「伸長のみ可」)。現行規約の緊急時短縮規定は附則第2条第3項により施行日からその効力を失っている。

(2) 招集通知の内容

招集通知に記載すべき事項は次のとおりです。

  • ① 会議の日時
  • ② 会議の場所
  • ③ 会議の目的
  • ④ 議案の要領(改正法で普通決議についても義務化)

(3) 定足数

【総会の定足数】

決議の種類定足数
普通決議管理規約の定めによる
特別決議組合員総数及び議決権総数の過半数(区分所有法第31条第1項ほか)

普通決議の定足数については、改正区分所有法には定めがなく、各管理組合の管理規約の定めによります。旧標準管理規約に倣って「半数以上」と定めている組合が多いと思われます(今回の標準管理規約改正では、「過半数以上」と規定)。

(4) 招集通知に明記することを推奨する事項

招集通知は、改正区分所有法第35条第1項により「会議の目的たる事項」と「議案の要領」の記載が義務付けられています。これに加えて、実務上の混乱を防ぐため、以下の事項を通知に明記することを推奨します。

  • 本総会が改正区分所有法(令和7年法律第47号、2026年4月1日施行)に基づいて運営されること
  • 管理規約の規定が改正法に抵触する場合は、改正法が優先して適用されること
  • 各議案について、決議要件と根拠条文を明示すること

【推奨する理由】

規約と現行法に齟齬がある状態のまま総会を開くと、議事進行中に決議要件をめぐる議論が紛糾したり、後から書面の整合性を問われたり、決議の有効性をめぐって紛争に発展した際に手続違反を指摘されたりするおそれがあります。これらは招集通知の段階で改正法に基づく運営である旨を明示しておけば、ほとんどが事前に防げる問題と考えます。

(5) 通知文の文例

実際の招集通知に組み込むイメージとして、以下のような文例を参考にしてください。

【総会運営について】

本総会は、令和8年4月1日施行の改正区分所有法(令和7年法律第47号)に基づき運営いたします。

なお、改正区分所有法には強行規定が含まれており、本管理組合の管理規約の定めがこれに抵触する場合は、改正区分所有法の規定が優先して適用されます。

【議案一覧および決議要件】

議案 決議要件 根拠条文
第1号議案 令和7年度収支決算の承認の件 普通決議(規約による) 区分所有法第39条第1項/管理規約第○条
第2号議案 令和8年度事業計画及び収支予算の承認の件 普通決議(規約による) 区分所有法第39条第1項/管理規約第○条
第3号議案 役員選任の件 普通決議(規約による) 区分所有法第39条第1項/管理規約第○条
第○号議案 管理規約の改正の件 特別決議(出席組合員及び議決権の各4分の3以上) 区分所有法第31条第1項

【総会の定足数】

決議の種類 定足数
普通決議 管理規約の定めによる
特別決議 組合員総数及び議決権総数の過半数(区分所有法第31条第1項ほか)

(注1)普通決議の決議要件は、各管理組合の規約の定めによります。従来の標準管理規約にならって「出席組合員の議決権の過半数」と定めている場合が多いと思われますが、旧区分所有法を踏襲して「区分所有者及び議決権の各過半数」と定めている場合もあります。

(注2)特別決議の決議要件は議案の種類によって異なり、「4分の3」とは限りません。たとえば改正法第17条では、共用部分に瑕疵があり他人の権利侵害のおそれがある場合の瑕疵除去のための変更や、バリアフリー基準への適合のための変更など、一定の場合に「3分の2以上」に緩和されました。このほかにも改正により決議要件が変わった事項があります。各議案の根拠条文を必ず確認してください。

文例はあくまでひな形であり、議案の構成や根拠条文は各管理組合の状況に応じて調整してください。

3. できる限り早く管理規約改正を

第2章で示した招集通知の整備は、あくまで応急処置です。総会のたびに「改正区分所有法に基づき運営します」「規約の定めが改正法に抵触する場合は改正法が優先します」と注記し続けることは、現実的ではありません。

国土交通省も、令和7年改正の説明資料の中で次のように述べています。

今回の区分所有法改正では、総会の招集手続きや、総会の定足数・多数決要件の変更等が行われており、管理規約を改正しないままだと、管理規約に書かれている内容に沿った総会の招集・会議の運営が違法となるだけでなく、その総会で決議された内容が無効とされるおそれがあります。

(国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約パンフレット」より)

 

規約と現行法が食い違ったままでは、混乱を招く要因となります。今回の改正は条文数が多く全面改正には合意形成の時間が必要ですが、選択の余地のない条項(強行規定に関わる部分)については、計画的に、しかしできる限り早く規約改正に取り組むことをお勧めします。

4. 補足(背景と用語の整理)

4-1. 区分所有法と標準管理規約の改正内容

改正区分所有法および改正標準管理規約の具体的な内容は、別の記事で詳しく解説する予定です。ここでは、過去の改正と今回の改正の位置づけを概観しておきます。

区分所有法の過去の改正

区分所有法は、マンションの管理・再生という社会の根幹に関わる法律であるため、改正は慎重かつ稀にしか行われません。

  • 昭和37年(1962年) 制定
  • 昭和58年(1983年) 大改正(多数決制度の本格導入、管理組合の位置づけ明確化など)
  • 平成14年(2002年) 大改正(建替え決議の要件緩和、管理組合法人化、規約共用部分の整備など)
  • 令和7年(2025年) 今回の大改正 → 2026年4月1日施行

今回は約23年ぶりの大幅改正にあたります。主な改正項目は次のとおりです。

  • 集会の決議の円滑化(出席者ベースの多数決の導入)
  • 共用部分の変更決議の要件緩和
  • 建替え決議の要件緩和(一定の客観的事由がある場合)
  • 所有者不明専有部分・管理不全専有部分等の管理命令制度
  • 集会の招集通知の見直し(議案の要領の記載義務化)
  • 国内管理人制度の新設(海外在住区分所有者対応)
  • 団地内建物の建替え・敷地売却決議の見直し
  • 被災マンション法の見直し

標準管理規約の過去の改正

標準管理規約は、区分所有法とは性格が異なります。各マンションが規約を作成・改正する際の「ひな形」として国土交通省が示しているものであり、社会情勢の変化や実務上の課題に応じて、比較的頻繁に改正されています。直近では令和3年、令和6年などにも改正されており、IT総会・電磁的方法による議決権行使、置き配や宅配ボックスへの対応、民泊への対応、組合員名簿の整備など、その時々の社会的要請を反映する形で見直しが続けられてきました。

今回(令和7年10月)の改正は、改正区分所有法への対応が主な目的です。総会の招集手続きや決議要件の見直しを中心に、各マンションの管理規約見直しの参考となるよう内容が更新されています。

4-2. 用語の整理

本記事で使用した主な用語を整理します。

用語説明
区分所有法「建物の区分所有等に関する法律」(昭和37年法律第69号)の通称。すべての分譲マンションに適用される法律
改正区分所有法2026年4月1日施行の改正後の区分所有法を指す通称として記載
マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法令和7年法律第47号。正式名称は「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」。区分所有法ほか複数のマンション関係法を一括改正する束ね法
強行規定管理規約に別の定めがあっても、法律が優先して適用されるルール。改正法附則第2条第3項により、抵触する旧規約の規定は施行日から効力を失う
標準管理規約「マンション標準管理規約」単棟型、団地型、複合用途型がある。国土交通省が示すマンション管理規約のひな形。これ自体に拘束力はなく、各マンションが規約を作成・改正する際の参考として用いられる
管理規約/規約各マンションの管理組合が定めているオリジナルの規約として本記事では区別なく「管理規約」「規約」と表記している
議案の要領議案の中身、決議の対象となる具体的内容(議題のタイトルだけでなく、何をどう決めるかの実質内容)

今回の改正は、これまで先送りされてきた課題を「整える機会」と捉えるのが適切です。

そして、管理規約の全体的な見直しを管理組合で協議することは、単に法令に適合させる作業にとどまりません。自分たちのマンションを、これからどのようなコミュニティにしていくのかを、区分所有者が共に考え、決めていく営みでもあります。

規約改正は、必ずしも一度にすべてを終える必要はありません。まずは強行規定の改正にとどめ、段階的に改正することも視野に入れながら、議論と合意形成のプロセスを大切にして、住む人たちが納得のいく規約に育てていただきたいと思います。

本記事で概観のみ示した区分所有法改正、標準管理規約改正の詳細については別の記事で解説する予定です。


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なお、本記事の内容を参考に具体的な総会運営や規約改正等を行う場合は、各管理組合の規約・実情に応じた個別対応が必要です。マンション管理士等の専門家にご相談のうえ進めていただくことをお勧めいたします。